「毎日弾いていたい。普段着のウクレレ」
これまで弾いてきたどのウクレレにもなかったしなやかさでずっと愛着の湧く存在になれるウクレレを作れたら良いなと思って制作に取り組んでおります。派手さよりも人懐っこさ、煌びやかさよりも味わい深さを求めたウクレレです。
大きさや音響特性の違う3タイプのボディに6つの弦長を組み合わせてより積極的なサウンドメイキングを追求する面白さがあります。
北アルプス、八ヶ岳、南アルプスなどを歩いてきた中でいつも感じてきた自然美をもとにデザインしたウクレレです。
一番容積の小さなtype1、少し幅広で中間サイズのtype2、コンサート専用サイズのtype3の3つのボディをご用意しております。特性の異なる3つのボディにそれぞれ3つずつ使用可能な弦長をご用意しました。
【ボディ】
【弦長】
【 Type3 】
コンサート専用ボディです。Type2でコンサートを作ればバランスのとれたサウンド、こちらのType3で作れば使う木材の特徴が顕著に出る傾向があります。
【使用可能スケール】
381mm / 392mm / 396mm
3typeのボディにお好きなスケールを自由に組み合わせて頂けます。自分の理想とするサウンドメイクを作り上げていける楽しさを一緒に味わいましょう。例えば一番小さなtype1ボディに375mmでソプラノロング、type2に392mmでブリッジをリムに寄せてピーキーなサウンドメイク、type3に396mmを合わせて大柄なコンサートになど組み合わせは自在です。
まだ2モデルのみの展開ですが最終的には年内に4つの装飾パターンになる予定です。クリームと小豆のロープ柄のQVモデル、スタビライズドウッドを嵌め込んだOHモデル、王道モノトーンストライプのSTモデル、アバロン貝をあしらったPPモデルの4展開となって参ります。
北アルプス、後立山連峰の盟主である鹿島槍ヶ岳の稜線をモチーフにしました。実際に扇沢から爺ヶ岳経由で登ってきました。冷池山壮あたりから見上げた雄大な稜線に感動し、それをそのままヘッドに流用させて頂きました。大自然のアウトラインはどこもかしこもアシンメトリーなのにいつも美しい調和を保っています。ヘッド上部は鹿島槍の稜線。ヘッドサイドのラインは稜線から下界へと続く長大な風景。その不規則なカーブをどう表現するか、何度も線を引いてやっとこのヘッドシェイプが完成しました。
北アルプスの丘に立って振り返るニホンジカをインレイしました
表板には基本的は針葉樹を使います。一番得意とするのは北米杉、つまりウエスタンレッドシダーです。同じくらいよく使っているのがドイツ松、つまりジャーマンスプルースです。どちらも太鼓の幕として最高の仕事をする木材です。出来上がったその日から全開に鳴るシダーか毎日弾き込んで自分色に育てていくスプルース。どちらも魅力的なトップ板だと思います。サイドバックには優しい響きのハワイアンコア、レスポンスの良いサペリ、針葉樹と最も相性の良いローズウッドの3種をよく使います。指板にはカメルーン産エボニーやマッカーサーエボニーの2種、ブリッジはたいていエボニーです。
ボディ外周をぐるっと保護しているのがバインディングです。ドーム形状の裏面はバインディング溝の加工に専用のジグを必要とするため手間がかかり、表面だけ巻くウクレレも多いですがうちは表裏両面巻いています。バインディングにはローズウッドかメイプルを使ってます。ボディボトム中央で継いでいるので実質的には表二本、裏二本の四本をボディに沿ってアイロンで曲げて接着します。ローズにはコンマ3ミリの白線を、メイプルには黒線をそれぞれ同時に貼り付けて曲げています。ただの保護や装飾的な意味合いに捉えられがちなこのバインディングですが、実は音響的に大きな作用を加えます。ドラムでいうところのリムに当たるこの部分の剛性を落とすことで表板の自由振動への妨げから解放する必要があります。具体的には板材を幅1.5mmまで薄くして卓上丸鋸で3mmごとに切って熱で曲げ、そのまま溝に設置するだけではなくボディ一周全て洋鉋やスクレイパーで斜めにスラント加工し、元の半分の質量まで削ぎ落とします。
同様にボディ内部に設置されているライニング(蛇腹)も無駄な設置面積をカットしてあります。某ハワイメーカーが壊れやすくなるリスクを負ってでもよく鳴っているのはこの蛇腹をなくしたためなのはご存知の通りですが実はバインディングも同じ原理で作用してます。ギターではあまり変化の起きないこのボディの縁はウクレレにとってはブレイシング以上にシビアにコントロールするべき重要パーツ群です。
エンドブロックの形状にも経験を踏まえた一工夫が施されています。ボディの重量バランスを考慮して無駄な体積をカットすること、エンドピンジャック加工も想定して最低限の厚みを確保しておくこと、蛇腹とラインを合わせてトップバック板のリムを統一することの3点です。あくまで機能追求のための一手間ですので、鑿で成形しただけで綺麗に研磨まではしません。
弦はマーティン社のM600を張っています。フロロカーボン弦ではありますが煌びやか過ぎず柔らかすぎないサウンドで触った感触もサラッとしていて誰にとっても扱いやすい弦だと思います。また、各弦ごとの役割がとてもよく考えられているなと感じる弦です。1弦は.019インチと細く最もテンションのかかるA440Hzでも音像を崩さずスッキリとした鳴りを実現していて、反対に3弦は.034インチとちょっとだけ太めでやはり太くコシのある鳴りがボディから叩き出されます。2021年までずっと何年もオルカスを標準で使ってきましたがバラツキが見られ張りもややキツめでした。ユーザーさんに教えてもらってやっとこの弦に落ち着きました。