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鎌倉モデル第二弾

2023.2.8-3.21製作

 

お久しぶりでございます。

やっとブログ更新するネタができました。

2月初旬に製作を開始していた鎌倉行きの3本がやっと仕上がりました。2月中は木工、3月に入ってからは塗装、十日間の吹き付け研磨の後で一週間の乾燥期間を経て19日から一本ずつ仕上げにかかりました。

360QVⅠ

[360QVⅠ]

まずはこちらからご紹介させて頂きます。

360ミリスケール、鎌倉クワイエットヴィレッジモデル、1型ボディで360QVⅠです。鎌倉モデルは口輪がクリームと小豆色のロープ柄となります。ホンジュラスマホガニーのボディにモノクロームロープ、エボニーの髭飾り、ハカランダ製のビルドインピックガード。前回までピックガードのラインはやや直線的だったのを少しカーブさせて逆さへの字になるようなラインに変更しました。ちょっとした違いが楽器の表情を柔らかくさせますね。

 

バインディングにはローズウッド。コンマ3ミリの細い白線を入れました。ボトムにはこちらもエボニーを入れてます。

もう自分の中ではすっかりお馴染みになってきた鹿島槍ヘッドです。マッカーサーエボニーの化粧板の下に白黒のラインを入れてあります。ヘッドの厚みは11ミリでペグはUPTのニッケル・ホワイトボタンです。

1月に鎌倉に納めさせていただいた360にはブレイシングなしでしたが今回は少しタイトにして徐々に経年変化を楽しんでほしい狙いで一本ブレイシングを真ん中に入れてあります。まだ生まれたてでどう変化するかは使う人次第。ユーザーさん好みの音に育てていってほしいソプラノロングです。

そうそう。タイトな音にしたかったので13フレットでジョイントさせてブリッジをややリム寄りにしています。音像が立つのでアタックが普段から強い人ならかなり面白い使い方ができるんじゃないでしょうか。

392QVⅡ

[392QVⅡ]

続いて二本目はこちら。

当方では今年から3つのコンサートスケールをご用意しています。

・381コンサートショート

・392コンサートミドル

・396コンサートロング

その真ん中、392ミリスケールにⅡ型のボディ(旧ソプラノロング用ボディ)を使用しています。今年まずやってみたかった組み合わせでスケールよりも一回り小さいボデイを付けることで得られる取り回しの良さとパワー感を体感して頂けます。

サイドバックに使っているサペリはスプルースとの相性抜群です。ローズよりも軽くマホガニーより少しだけ硬い中間的な立ち位置でレスポンスが早いんです。軽くタッチしてもポーンと鳴ってくれます。

マホガニーよりもややダークな色味が男前です。

鹿島槍ヘッド、今回は少し丸めの鹿島槍南峰です。吊尾根から北峰は鋭角。

取り回しの良さとレスポンスの速さをぜひ鎌倉で体感してください。

396QVⅢ

[396QVⅢ]

三本目はコンサートロングのご紹介です。

表板はこちらもジャーマンスプルース、サイドバックには素杢のハワイアンコアです。このⅢ型ボディは旧スタイル4コンサートのボディです。10年前にタイのアーティストのアピラクと一緒に開発したものを今年復活させました。ウクレレには大きな肩は要らないことに最近になってやっと気がついたんです。そのことをアピラクは知っていたんでしょうか。だとしたら凄い。このシェイプは今になってとても理想的なラインを描いていることを再認識しました。右手の置き所、程よいくびれ、ふくよかな太鼓。

そこに柔らかいサイドバックと太いジャーマンの鳴り。鎌倉モデルのスッキリした装飾で作りたい音楽に集中できるコンサートウクレレだと思います。今年から採用しているビルドイン(埋め込み)ピックガードには超高級木材のハカランダを入れています。ぶっちゃけ表板のジャーマンスプルースより遥かに高価なのは内緒です。ここに硬いローズ系の木を埋め込んでおくことでよくあるスクラッチ傷やひどいと抉れなどの症状を未然に防ぐことができるんです。重厚でウッディな雰囲気を出すために惜しみなくブラジリアンローズの面白い木目部分をトリミングして嵌め込みました。

よく見るとうっすらとした杢もあるほぼプレーンなハワイアンコアをサイドバックに使いました。ジャーマン幕の粒だちの良いアタック音に素杢コアのウォーミーな器でまろやかさをプラスしたサウンドです。

 

 

 

こちらもローズウッドバインディング、極細白線スタイルです。セルバインディングよりもMIDが立ってるような、より耳に近い鳴り方です。

マッカーサーエボニー柄のヘッド。

と、いう感じで飽きのこないシンプルなデザインでずっと愛用していただけるコンサートロングに仕上がりました。ぜひ鎌倉でお試しください。

今回はサービスでモーリスの高級楽器用クリーニングクロスを同封させて頂きました。ギター用で大きいので3分の1にカットして入れてます。お手入れに使ってください。鎌倉三本、個人様一本をクロネコヤマトで発送致しました。

いやはや、今回もいい仕事した(自画自賛)

さて、お次は4月末に納品予定のウクレレショップオハナさんモデルです。器は出来てまして表板の加工に入るところです。今回の鎌倉モデルではローズウッドバインディングを使って軽快なサウンドに仕立てることが出来たのが何よりの収穫でした。苦手だったので少し自信にもなりました。1月に鎌倉のお店で本郷さんのソプラノを弾かせて頂いたことでウッドバインディングの概念が変わり、僕もやってみようと思いました。ウッドは音が硬くなるというのはもしや偏見なのではと気づかせられるぐらいの元気なサウンドを放つ本郷ソプラノに触れたのは今年最もラッキーな体験になったかも知れません。

たかだか10年ちょっとやっただけじゃ分からないことだらけです。「これはもうこうなんだ」と考えを固めてたら進歩はまずないよって諭された気がしました。もっと色んな同業者のウクレレを製作者ご本人を交えて勉強させて頂く機会をいずれ持ちたいと考えてます。多分収穫しかなさそうだし。では、また!