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甘い音

定食屋で「いつもの」と頼むと台湾ラーメンですが…

 

やっぱり僕はソプラノが好きです。

こんな小さな、たった344mmしかないスケールのウクレレから放たれる意表をつく音圧。それでいて全く押し付けがましくない音色。それどころか心地よさに満ち満ちている空気感。こういう感動的なソプラノを一本でも多く後世に残していけるウクレレビルダーになりたい。それが僕の仕事の表テーマでずっとやってきました。

 

と、一通りの宣伝をした上で本題に(笑)

今年の裏テーマ、というかここ2、3年ずっと課題にしていたことがあるんです。際限なく枯渇していくトーンウッド。20世紀を彩った王道のトーンウッドから一歩先へ行くにはどうすれば良いのか。これをずっと考えてきました。それでも今も昔も目標は同じ「陶酔できる音」です。枯れたビンテージサウンドを放つ往年のマホガニーはもうないと言っても過言じゃない昨今。じゃ、その音の魅力は何だったのかを考えてみるとそれは「甘さ」なんじゃないかなと思うんです。それは上手く表現できないけれどもシャープネスバッキバキの音の塊がドンっじゃなくて、フワッとしてウォーミーな音像の奥に芯が残るみたいなイメージです。その「甘さ」を出せる木材の組み合わせを探してきました。今年も試験機を何本か作っていく中で成功機を2本作ることができました。今年ようやく結果を出しつつある木材の一つがサペリなんです。今年はこのサペリをサイドバックにひたすら使っています。トップにはマホガニーやコア、スプルース。これらの実験機の結果の蓄積をそろそろ市販機に本格実用出来そうです。今年は闇雲に数を作ることを意識的に抑え込んで、来年、再来年を見据えての「チェンジ」の一年にしています。目に見えて姿形が変わっている以上に、新しい音作りを模索中です。僕は他の製作者と比較して自分の製作スタイルを追い込むというやり方はしてきませんでした。これからもしないと思います。自分自身が惚れ惚れできる甘い音をどうしたらより高確率で作り上げることができるかばかりを考えてます。一人でも多くの方に、こんな甘い音の出るウクレレがあるんだって感動して頂けるように。もっと努力せねば。