何もそんな山奥まで行かんでも
いいんじゃないの?という声が方々から聞こえてきます。確かに。ヘッド形状なんて工房の作業机の上でむ〜んと捻り出せばいいじゃないか、って話ですよね。
今回、開業以来初めてとなるヘッドチェンジなんです。普通はどこのメーカーもいくつかのヘッドパターンを持ってるもんじゃないですか。うちはもう十何年もずっとマーチンギターのスクエアヘッド一つでやってきたんです。
そもそもなぜウクレレ界では珍しいスクエアヘッドをずっと採用してきたのかって話ですよね。
それは単純明快に昔からトリプル0やD28が大好きだったからです。クラプトンがアンプラグドで大ヒットを打ちかましたど真ん中に青春時代が被っていることが大きいんだと思います。"Before acuse me"なんて聴きながら何杯の酒を頂いたことか。つまり、クラプトンが好きなんです。全然ウクレレ関係ない、ですが。自分はそういうギターだウクレレだと分別することに意味を感じないタチの人間でして。
標高2600mに咲くコマクサ
水が極端に少ない環境下で生きることで競合種が少ない
自分を鍛え抜くことで生き抜く地を得る
そしてこんなに可憐
この花もモチーフとしてどうにかして入れたいな。
ではなぜこのタイミングで15年も続けてきたスクエアヘッドを変えようとしているのか。そこです。
これはズバリ、もっと芸術性を高めたい時期に差し掛かっていること。これです。
芸術性、これを追求する前段階として自分のウクレレの音作りのノウハウを確立することが大切ですよね。まだ6割方でありますが、ずっとやってきて自分なりの音作りの仕方みたいなものは完成しつつあります。
そろそろ「ビジュアル」面を一新していきたいと思いました。
楽器の顔とも言うべきヘッド。ここにはやっぱり自分が一番心身をリフレッシュできるモチーフを入れたい。
そう思ったとき、自然と体が北アルプスに向かっていました。
入れたかったモチーフ。北アルプス、後立山連峰の百名山「鹿島槍ヶ岳」。
ご覧の通り二つのピークを持つ双耳峰です。写真左手に見えるピークが南峰2889m。抉れた吊り尾根の先にある写真右手が北峰で2842m。
実際登って行くとその大きさに圧倒されました。巨大で、寛容。その時はたまたま気象が穏やかだったからですが受け入れて頂いた喜びに満ちていました。
どうにかしてこの鹿島槍に頂いた寛容なエネルギーをヘッドモチーフに取り込みたい。そんな原体験を胸に工房にイメージを持ち帰りました。
厳しくも大らかで偉大な南峰。弟分のようでもやはり荘厳な北峰。
これを落とし込んだ新しいヘッドデザインを何度も描いてやっとテンプレートに落とし込みました。
そうしてやっと出来上がったのがこちらです。
ソプラノ&コンサート用、テナー用。北アルプス、「鹿島槍ヘッド」の誕生の瞬間です。
自分の足で重いザックを背負って、二十五キロ歩いた先で体験してきた思いを形にしました。
来月下旬、クロサワ楽器さん納入分の3本から採用していく予定ですのでよろしくお願いします。
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