阿佐ヶ谷行き #270Classic Soprano BR
個人的に、あくまでも私個人のですが。理想とする音が出るであろう個体ってのは、もう弾く前から、ひょいっと手に取った時点でわかります。この感じ、なんと表現すればいいんだろう。左手にネック、右手にボディを乗せた時点でふわっとした感覚があるんですよ。あ、無駄がないぞこれ。全部弦振動のために集約されている竿と箱だ。みたいな感触が理屈抜きで存在している。あ、ちなみにこの話はマホガニー製の場合です。マイルドで深みのあるサウンドキャラを持ったマホガニーウクレレはとにかく軽い。ただ軽いだけだと単純明快な明るく大きな鳴りしか出てこないんだけど、そこをボディの奥に甘さを感じるようなキャラに持って行けた時が理想ドンピシャ。これが難しい。
さて、ここからは同規模同業者の皆様との話題。ウクレレを買う消費者側からすれば全く関係のない話ですので読み飛ばして下さい。我々ものづくりを生業とする小規模作家のような個人事業主を大きく揺るがす「インボイス制度」が来年2023年10月から始まろうとしています。そこから6年間は経過措置が取られるんですが。どっちの道を選ぶかです。この先順調に事業が成長軌道に乗って年間の売上高が1000万を超す見込みがあるのならば何の躊躇いもなく課税事業者登録申請しますが果たしてこの不透明なご時世で安定的な右肩上がりを目論むことが可能なのか。むしろ現状の売上高をキープしつつコスト見直しをさらに徹底していくべきなのか。もし後者を選択するとなるとこれまでのようなB to B事業展開は必然的に縮小に向かう(適格請求書発行事業者ではない者からの仕入れ税額控除ができなくなるため零細個人事業からのショップ納入が憚られる)ので、段階的にB to Cに重きをおく事業スタイルに変えていく必要が出てくる。今後個別に関係店舗ごとに取り決めていく必要があるわけですが、この法改正が決まっている以上何も手を打たなければこの先収入が減っていくしかないのが現実。この制度は業種によってはあまり影響を受けないと思います。直接お客さんを相手にする事業、例えば美容院とか飲食店。一番影響を受けるのは原材料を加工して成果を納めるような事業。詰まる所、そういう事情があって先週からWEB STOREを始めました。これまでと全く同じままではいられない現実にどう対処するか。安定的に毎年1000万の大台を超えるためにはもっとビジネスライクなノウハウを製作から営業に至るまで学んでいかないと厳しいし、そういったビジネスモデルをたとえ作れたとしてもそれをずっと維持していくために製作するというのはどこか本末転倒な気がしてしまう。一本一本じっくり作り込むスタイルの私にはそれはたぶん、向かないと思う。本音を言えば今の製作本数と目標とする品質が自分にとっては理想的な環境であり、現状以上の売上高も特段望んでません。現状の製作本数、品質、価格帯を維持してずっとこの仕事を長く続けて行きたいと考えてます。だから法改正に合わせて無理に1000万を目指そうとは思わない。これとは別の話で節税対策として確定拠出年金を始めることにもしています。多分僕ら現役世代が老後を迎える頃には年金受給環境はさらに選択肢が狭まることが目に見えているので余分に所得をぶらつかせておくよりイデコに置き換えた方が明らかに得策。来年以降の、目の前の未来を猛烈に考えなくちゃならん日々が続いております。僕と同規模、同業のみんな。ウクレレ作ってるだけなら楽しいんですが事業を続けるのはますます大変な時代になって参りましたね。お互い頑張ろう。
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