経過と転機

ソプラノからテナーまで一通りのモデルラインナップを作り上げ、その後は木材を色々と変えてモデルごとにずっと同じように製作して行く…。おそらく昨年までこのパターンに私もハマりかけてました。一つのモデルに色んな木材の特徴を生かして音色や見てくれの雰囲氣を変えて製作スキルを磨いて行くことは確かに大切だと思います。

かく言う私も派手なコアを使って来ましたしブラジリアンローズやフランケンウォルナットなどの希少材を使ったりして来ました。だんだんとそっちの方が主体になっていたことに対して疑問を抱いたのが今年の春先。そもそも私が一番愛する木材は何なのかを考える機会があり、それはやはりマホガニーだということでした。

マホガニー製のウクレレには他のどんな高級木材にも勝る気品高い柔らかな音色があります。この木材を活かすにはとことん余分なトーンブレイスを排除することとサウンドホール周辺の補強方法を充実させる必要があります。スプルースやシダーウッドなどの針葉樹のように縦方向に繊維があって強度が保たれ易い木材ならば反対にサウンドホール周辺の補強は簡素化します。ブリッジ直下の弦振動が針葉樹ならば縦に伝わり易いので深いところの鳴りまでもがハッキリとサウンドホールから溢れ出て来ますがマホガニーは広葉樹ですのでサウンドホールへ導く音道と縦方向の力への耐久力を最小限のブレイスでもって作ってやる必要があります。これが多すぎたり意図がみえてこないブレイス配置にしてしまうと単に表板の動きをガチガチに固めてしまうことになります。ただ理屈で分かっていても実際の木工の中でマホガニーの表板を目の前にしたとき、追い入れ鑿を手にして果たしてどこまでブレイスを削ぎ落として良いものかは経験によってしか分からないことも事実であり、今後の研究課題であり続けると思います。

 

 

 

 

 

 

 

ナットの高さ、フレットの選択、指板の厚み、サドルの高さの4点はこれまでもずっと試行錯誤し続けて来ました。結論に達した訳ではないですが、現時点でナット高、フレット高、サドル高はそれぞれ高さを増すように変更しました。指板厚はこれまで3.5ミリだったのを4.0ミリに上げました。つまり全体的に高く厚く変化しています。しかしそれと反対にヘッド角はこれまでの11.5度から10.5度に緩くしました。トータルの弦のテンションは変わらずに弾き心地の良さのみが増しています。これは特にギタースモールフレットを使っていることとレベリング方法の見直しによる部分が大きいです。これまでの細く高いフレットから幅があって操作性の高いフレットに変わったことはきっと弾き手にとって有益な変化になると確信してます。レベリング(擦り合わせ)方法もこれまでのストレートガイドに頼りつつのフラットレベリングを見直しました。弦の振動の仕方に着目して、それに合わせたレベリング方法を模索しました。右手で弾かれた弦の振幅に合わせてミドルポジションあたりまでは階段状にフレットレベルを整えていきます。ミドルからハイポジション以降はフラットにするように変更しました。

 

 

 

 

 

 

外見の上での改良も加えました。一番の変更点はこのストライプドエボニーによるウッドピックガードです。厚さを1.5ミリまで落とし込んだ木製のピックガードは楽器の醸し出す熟成された雰囲氣を助長します。これまでの塩ビ製ピックガードよりも加工の手間はかかります。それでもこのオイルフィニッシュされた木製ピックガードのテイストには代え難いものを感じます。

 

 

 

 

 

 

ボトムオーナメントは低めの富士山型になりました。最初の頃はものすごくツンツン尖っていたかと思います。槍ヶ岳みたいな…。槍から富士になったおかげで指板エンドを単にひっくり返す型になり、指板エンドとボディボトムが一対の模様をシンプルに描くデザインに落ち着きました。木製ピックガードと合わせて全体的に大人な雰囲氣のウクレレに昇華したと思います。

 

 

 

 

 

今年初夏。目標にさせて頂いているシンジさんのセイレン工房にお邪魔して細かい部分まで目を光らせて学ばせて頂いたことが転機となりました。製作の現場に行って直に教えを請うことの意義は実際に大きな変化をもたらしました。どんなコンセプトのもとで自分のつくるウクレレをもっと面白いものにして行くのか。自分自身で常に好奇心を持って製作の細かなところを見直して行くこと。そんなこと言われた訳じゃありませんがセイレンの作業場を見て感じたのは肩肘はらずに愚直に、地道に自分自身と向き合うことが製作スキルを一歩ずつ前進させる力になることを教えて頂いている…そんな貴重な体験でした。

 

 

 

 

 

 

 

2014年5月。この出展を最後に東京へは出向いていません。そこから今に至るまでほんとに沢山の出来事がありました。そろそろまた東京に行っても良い頃合になってきたかもしれません。来年あたり久しぶりにハンクラ出展しようかな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Renewal models

話が長くなりましたがそういった経緯の中でリボーンしたスタイル4のコンサートです。2014年の同モデルとの違いを感じて頂ければ幸いです。全体的にギラギラしていた当時のものは、それはそれで魅力的だったとも思います。次節を経て進化…深化した先が渋枯れしたこのリボーンモデルなんだと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サウンドホールの位置も四年前より8ミリもボトム側に移っています。一層ヴィンテージな雰囲氣を醸し出しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらは396ミリスケールコンサートのスタイル6MCです。スタイル4コンサートより15ミリスケールが長く、一回り肩が大きくなった上で14フレットジョイントを採用しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタイル4(左)とスタイル6(右)。同じコンサートだけど鳴り方がはっきりと異なります。これは実際に弾いてみないと分からない部分。ぜひオハナさんでお手にとって弾いてみてほしいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてスタイル8コンサートロング。スケールは410ミリ。一回り大きなコンサートロング。テナーが432ミリなのでちょうどコンサートとテナーの中間くらいです。この存在感はかなりのものです。弾き味も普通のコンサートとはちょっと違います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタイル6コンサート(左)とスタイル8コンサートロング(右)。どれにするかは人それぞれの好みかと思いますが…実際に弾いてみると本気で迷うことと思います!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回のリボーンモデル3本ともオハナさんに行きます。そしてなんと…こんな工房のハンドブックまでくっついて行きますよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一丁前に手書きでサインなんか入れてあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中身はこんな感じです。後はお店で…。