先日、妻の希望で夏に新しく高山駅前にオープンしたホテルに泊まる機会がありました。行ってみるとオープンして三ヶ月ほどの館内はどこもかしこも新しくてピカピカでした。和モダンの綺麗な部屋、美味しいオードブル、黒い大理石の大浴場。妻には言っていませんが、行ってみての僕の感想は「良かったけど十年経ったらきっと記憶も曖昧なホテル」でした。綺麗な館内、美味しい料理は確かにそうだったけど何か心に刺さるものがあったかと言えばなかった。それはたぶん、人情だった気がします。新しいがゆえにサービスの何もかもが上質なシステム的なもの、無機質なものだった。僕個人の好みの問題だけど心に残る旅はいつも人情に触れるものでした。海辺の寂れた民宿でめちゃくちゃ面白いおばちゃんが切り盛りしていて、そこで出された蟹汁やら刺身やら、やたら旨い糠漬けやらを地元訛りで提供された記憶は一生忘れないわけで。くったくたになって泊まった山小屋で親切にストーブで体を温めてくれたスタッフのこと、テント場で出会っただけのおっちゃんと宴会したこと、旅を濃厚にするものはいつだって人の温もりでした。きっと楽器もそうなんだと思うんです。最新設備でバシッと出来上がるウクレレが多勢を占める中、細々と個人製作家がここに存在する理由。人の手で一つずつ丁寧に、時間をかけて作り上げるウクレレは人情の塊なんです。自動カンナを使わず台鉋で面出しする手作業やあえて非対称かつ複雑なシェイプに仕立てたネックグリップ、細やかな心配りを随所に配したナット・サドル・フレットメイキング、「人が人のために作るウクレレ」。そこに製作家の心意気を感じてほしいんです。田舎の民宿でしか味わえない粋のような。きっと一生愛用できる一本をお作りします。