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魔法のかけ方を知りたい

ただただ納得するまで作り込んだ一本が完成

まず反省点はブリッジプレートをもう10ミリ程度幅広にすべきだったか。サウンドホール周りの板厚をもう一声、コンマ1ミリ落とし込むべきだったか。これは作りながらも常に頭の中で一手先を考えつつ進めていた数ある葛藤のうちの一つだ。正直言って、もしその時点でこの仮定通りに薄くしていたとしても納得いく結果になっていたかは不明。ここが難しい。と言うよりも、今年久しぶりに90点台を叩き出すサウンドを放つソプラノを偶然にも作ることができた。それは嬉しい反面、その後のハードルになってくるので苦しくもある。これまでの平均点が上がると、当然、自分の中の及第点も上昇する。ボワッと出る音の塊がまず飛んでくる。その中に凛とした艶っぽい、しかも芯のある単音が浮かび上がってくる。これが理想。それが難しい。多分、自分が求めている及第点の音は、感動するウクレレサウンドの定義はここなんだと思う。とにかく柔らかい音の塊。その奥の艶と芯の琴線。これに両耳が包まれるともう魔法にかかったようにそのウクレレ以外は手に取れなくなってしまう。その魔法のかけ方、こう作れば絶対そうなるみたいものが曖昧すぎて存在しないから難しい。出音が大きくて明るい単純明快な音は誰にでも簡単に作れる。そんなの工場製品に任せればいいし、わざわざ年間30本前後しか作れない個人制作でやる必要も需要もない。将棋の名人戦みたいなもの。相手がどう出るかで手数を変えて具体的に対応していかないと期待した結果にたどり着かない世界。今年はあと何本、90点の大台を超える個体に出会えるだろうか。