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完全主観的スピーカーサウンド

昨年末に完成させた自家用ウクレレ「クラシックコンサート」です。オールマホガニー単板ボディの381ミリスケールで12フレットジョイント。コンサートというか不思議なんですが大きなソプラノを弾いてる感覚があります。こちらのウクレレにLRBaggs社のアクティブタイプピックアップ、five-oを搭載して最近始めたstand.fmというインターネットラジオ番組の中でスピーカーサウンドのウクレレを演奏しています。ぜひご試聴下さい♪




いつもクラシックコンサートのボディは木工段階で共振周波数域を220Hz近辺、つまりA音周辺でよく鳴るように組み上げているんですが今回は試験的に半音上のB♭で最も箱鳴りするように組みました。キーFの曲調で4度の音にボディがよく響き結果的にB♭△7やFadd9thなどのテンションコードでとても心地の良いラウド感を伴った響き方をしています。良かった良かった。


クラシックソプラノやモダンソプラノのボディにはセオリー通り共振周波数域をCに合わせて作ります。そうすることで小さなボディでも迫力のある太い音に聞こえるように組み上がります。…あ、違う違う。今日のお題はそういう話じゃなかった。

2015年から数年の間ピックアップはパッシブタイプのFISHMANのAG-ukuleleをテナーモデルに搭載してサウンドを作り込んで来ました。昨年末に自家用ウクレレにクラシックコンサートを新調したことによりピックアップシステムも一から再構築しています。今回使っているピックアップはこのLRBaggs社のfive-o、アクティブタイプです。つまりプリアンプ内臓。まだまだ「これで決まり!」と言えるとこまではほど遠いですが今まさにあれやこれやと試行錯誤している状況をブログに記録しておこうかと思います。

 





 

 


ここでピックアップやスピーカーについて何も知らないという方のために基礎知識だけ簡単にご説明させて頂きます。そんな基礎知識は知ってるぜって方はすっ飛ばして先へ読み進めて下さいませ。

まず用語説明です。「スピーカー」というのは音を出力する装置です。「アンプ」というのは音を増幅する回路や装置のことです。「ピックアップ」というのは生音を電気信号に変換する装置です。

スピーカーから音が出るまでの流れを簡単にお話ししますね。


ウクレレを弾く、つまり弦をはじくと音が出ます(⇦当たり前ですが)。ピックアップにはその音を直接拾うマイクタイプもあれば表板の振動を任意の場所で拾う貼り付け型(コンタクトピエゾタイプ)、ブリッジのサドルの下で振動を直に拾う方式(アンダーサドルタイプ)の主に三つのタイプがあります。いずれの方式にせよ弦の鳴りを電気信号に変える役割を担っているのがピックアップです。ただ振動を拾ったばかりの電気信号はとても微弱なのでスピーカーに直接送っても蚊の鳴き声ほどにしかなりません。なのでこの信号を増幅する装置が必要になります。それがアンプ(電気信号を増幅する装置)です。ピックアップの電気信号を増幅(アンプリファイ)して初めてスピーカーから音が出ます。楽器用語ではアンプと一言でスピーカーの意味で括られることが多いですが正確に言えばアンプ内蔵のスピーカーということになります。ま、アンプと一言で呼んでほぼ通じるので別にアンプと呼んでしまっても差し支えないと思います。




さて、ピックアップにはさきほど挙げた三つのタイプにそれぞれパッシブタイプとアクティブタイプの二種類が存在します。これはプリアンプが内蔵されているかいないかの分類です。プリアンプというのは読んで字の如くアンプの前、プリ・アンプです。ピックアップ自体にアンプが内蔵されていて振動を拾った時点でよりしっかりとした電気信号にしてくれます。より強い信号にすることでケーブルからスピーカーに届くまでの抵抗に強くなるわけです。パッシブタイプ、つまりプリアンプなしのピックアップはアクティブピックアップに比べると微弱な信号のままケーブルという名の電気抵抗をかいくぐってスピーカーの中のアンプに届けようと頑張っているわけです。余談ですがケーブルはケーブルそのものの品質の良し悪しをみる以前に自分の演奏スタイルに適した最短の長さを考えることの方が大事だと私は考えます。ケーブルは抵抗ですから短いに越したことないわけです。品質が良いケーブルはつまり信号に対するロスが少ない上に周囲からの電磁ノイズにも強いことになります。





アクティブタイプのピックアップではプリアンプで増幅された信号がさらにスピーカーのアンプでもう一度増幅されるわけですからパッシブのときと同じゲインにしていたら信号の入力過多で音が割れます。一番信号にとって都合の良いゲイン値を探ることが理想のスピーカーサウンド作りの第一歩。



さて、話を私の新調ピックアップに戻しますね。



久しぶりのこの作業、相変わらずピックアップの取り付けは苦手です。あらかじめ断っておきますが私は一切お客さん向けにピックアップの取り付けは請け負っておりません。理由は単純で、下手くそだからです。ウクレレ作りに関してはたくさんの経験を積んでおり、全責任を持ちますがこの作業の経験値はやはりお店の専属のスタッフさんに遥かに劣ります。であればそちらに…と言う考えから私はやりません。あくまで自家用を自己責任でやっているだけです。

 

 

 

 

以前までは毎週カフェでBGM演奏係をやっておりました。ランチタイムの店内はマダム達の談笑に溢れていてとても生音だけでは足りず、そのためスピーカーから柔らかめに届ける必要がありました。だから厳密に言うとライブとは違う条件でした。ライブは観衆が演奏を聴きに来ているのでやんわりほんのりと包み込むようなBGMサウンドじゃなくて、より直球で客席に届く音作りになります。鳥羽や大津、懐かしのJR東日本主催のマキノ高原ネスカフェアンバサダーキャンプ(今から思えばよくあんなビッグイベントに呼ばれたもんだと我ながら感心しております…😅)でのライブ遠征に行った時はまさにそんな音作りでした。あれから数年経ってコロナ禍にある今、狭い工房でたった一人朝の45分間をスピーカー音で弾く目的はただ一つ。「生音とは別に異次元なスピーカー音に自分一人が酔いしれたい」だけです。なんじゃそりゃ、馬鹿か。と、アンチにディスられてもいい。これまでみたいに店や会場に来たお客さんのために弾くんじゃくて、自分のためにスピーカー音を堪能したくなったんです。

で、ここからは完全に主観的な考えに基づく話です。生音に勝るウクレレサウンドはありません。それは間違いない。じゃ、なんで「わざわざ時間と労力をかけてまで不必要にスピーカーで音作りをするのか」についてです。あくまで私が感じる個人的なスピーカーサウンドの魅力ですが、配線からプリアンプ、DI、スピーカーに至り、ソロかオケ演奏か、オケ演奏ならオケ内の楽器との相性までの全ての条件がハマったときだけに生音では到底出すことの出来ない陶酔サウンドを体感できることです。どっかのイコライザーのツマミ一つ設定が変わっただけでもスピーカーから出てくるリザルトは変化するのでそれが複数絡み合うとはっきり言って宅録素人の私にはもう訳がわかりません。よく見かけるピックアップやアコースティックアンプの話題に「より生音に近くて良い」的なものがありますが私にとっては前述したように生音とは別次元のサウンドとして捉えているので生音の延長である必要性がありません。あ、何度も言いますがこれもあくまで個人的見解ですからね。私はアコースティック楽器が一番好きです。でもエレクトリックギターのソロインストも大好きなんです。別物でしょ?でも感覚としては同じ心地良さなんです。ストラトキャスター一本でフェンダーのツインリバーブから放たれるインストなんて最高です。あんな感覚をもしかしたらこの狭い工房の中で再現したいのかも知れません。ただスピーカー音であっても「エアー感」は必ず出したいんです。でも低音から高音まで全部欲張って詰め込もうとするとスピーカーの容量をピエゾ音で埋め尽くしてしまい、そのエアー感を出すための余白がなくなってしまう。





ここからはもっと具体的なパラアコの設定の話です。パラアコースティックD.I.(通称パラアコ)、Direct Inject Box。ハイインピーダンスをローインピーダンスに変換するものとしてライブ演奏では必要となるアイテムです。出力側のウクレレと入力側のスピーカーとの間にあるインピーダンス(電気抵抗)の高低差を整えるための装置がDIです。高い電気抵抗の機材から低い電気抵抗の機材へとそのまま信号を流し込むと音質が劣化します。ウクレレ側は高インピーダンス、スピーカー側は低インピーダンスとなっています。なので一旦ピックアップからの信号をローインピーダンスに変換してあげてからミキサー、若しくはスピーカーに送るんです。パラアコを使う第一の意義はその抵抗変換機としての役割ですが、同時に音作りをするもの(つまりイコライザー)として大きな力を発揮してくれます。各周波数域ごとに細かくブーストやカットすることができるんです。あらかじめ自分の拘りのイコライジングを設定しておけばパラアコ一つ持ってどんなライブ会場に行っても自分の音で演奏できるのも魅力です。ライブ会場にいるP.Aさんごとに出てくる音が変わってしまっては落ち着いて演奏できませんもんね。




まずはじめにウクレレの持つ周波数域の確認をしておきます。ローGの場合、このGは196Hz。3弦Cは262Hz、2弦Eは330Hz、1弦Aはご存知の通り世界基準の440Hz。で、これらは当然開放弦での音。1弦15フレットのCで1046Hz、この辺まで使うとしたらウクレレで主に使われる周波数域は下は200Hz前後から上で1000Hzぐらいまでと考えて良いと思います。




パラアコには写真の5つのツマミが並んでる訳ですがそれぞれどの辺りの周波数帯を受け持つのか説明しておきますね。

まず一番左のlowは85Hz近辺の重低音。ベースの音域でウクレレにとっては関係ない周波数域…と、ばかりこれまで決め付けてました。ふと疑問に思って先日改めていじってみたんです。ツマミを真上の位置、つまり0時から反時計(左)方向に回せばその周波数域をカットして行くことになり、時計周り(右)に回せばその周波数域を膨らませて行くことになります。わかり易く左に回し切った完全にカットした音とどちらにも振らない0時位置と右に回し切った完全に増幅させた音で比べると全くサウンドが変わりました。ローGの音が太くなる。でも1時か2時程度までなら大丈夫だけとそれ以上増幅させるとコードを弾いたときに音が割れました。なのでカットで10時辺りに。


次に右から二番目、NOTCHです。初めて見たとき「なんじゃノッチってのは?」って思いました。周波数域は98-247Hz辺りを受け持ってます。つまりローG開放からロー弦2フレットA、4フレットB辺りの音をどうするかって言うツマミ。でもこれ体感的には3弦Cの開放音から3弦4フレットE音くらいまで影響力があるように感じます。今、最も迷走しているツマミがこのノッチです。


このノッチツマミに連動して影響力を持っているのが右上にあるGADBと書かれたツマミ。ノッチツマミはより積極的に任意の周波数域をコントロールします。いま私はこのDからBの真ん中あたりにツマミを合わせて(つまりローG弦開放200Hz前後の音からBの247Hzの範囲)をカットするかブーストするかで大いに彷徨ってます。カットすれば1弦のメロディがよく立つクリアサウンド、ブーストすればファットな3弦の鳴りに。ただこれがですね。ブーストしちゃうとここの周波数域が太くなり過ぎて結果的にスピーカー内が飽和しちゃうんです。低い音域が回って全体的にブワァ〜っと濁って聴き取りにくい音になっちゃう。だからほんとは太い低音が欲しくても渋々気持ちカットします。これも11時くらい。録音して比べると明らかにカットした方がクリアで聴き取り易い。だからいっそのこと中途半端にDとBの中間とかせずにBの位置まで回して11時くらいのカット設定に今のところ落ち着いています。

















次にウクレレにとって最も関係するMIDツマミについてです。

 




 

 

 


このツマミに直結しているもう一つのツマミにご注目。.4KHz、.8KHz、1.2KHz、1.6KHzとありますね。ウクレレにおいての使い方としては基幹音域となる400から1000Hz辺りまでを膨らませるか、若しくは倍音域となって耳障りに聴こえやすい高周波数領域をカットするかのどちらかとなります。



私の場合、だいたい1KHz(つまり真上の位置)に合わせMIDツマミはややブーストさせます。この決め方はまずMIDツマミをブースト方向に回し切ってどの周波数域が一番ハウリングを起こし易いのかを試します。そこでもしハウリングを起こすようであればMIDツマミをカット方向に回してハウリング対策として使う。ハウリングがどの周波数域でも起きないのであれば自分が強調したい周波数域をブーストさせます。


PRES(プリゼンス)ツマミは音に艶を付ける程度に少しだけブーストさせます。1時ぐらいかな。一番右のトレブルツマミは耳に聴き取れないほどの帯域なのでカット方向にしています。



ジャック部分のアップ写真です。左のOUTジャックはもちろん出力側。右のINはウクレレから入ってくる入力側。真ん中のFXループは私の場合、ここにリバーブエフェクターを繋いでいます。

 

 




 

 

 


ここで一番大事な部分はジャックではなく”INVERT”と”GAIN”です。インバーターは信号の位相を反転させるスイッチで、ここを一発押すだけでハウリングが止まったりしますが全体的な音も変わるので注意。奔放サウンドから真面目サウンドになります。どちらが良いかは人それぞれかも知れません。そして最重要機能がGAINです。ゲイン。一旦設定したら下手にさわって誤作動しないようにプラスドライバーで回して調節します。合わせ方はちょっと強めにピッキング、またはストロークしながらゲインをプラス方向に回していって音が割れる一歩か二歩手前にしておきます。これでピックアップから来た信号をより使える信号までグググっと持ち上げたことになります。パラアコから先のインターフェース、もしくはスピーカーまでの距離を強い信号が渡っていくことになるわけです。

そして何よりも重要なのがスピーカーであることは言うまでもありません。どのスピーカーを選ぶかが最も大切だと思います。私の数少ない経験の中での比較ですが30Wと60Wではまるで音質が変わりました。7年前から愛用しているのがこのローランドのAC-60Rです。スピーカーの音に関してはほんとに好みだと思いますが音の太さは出力に比例しているのは間違いないと思います。AC-60にはアンチフィードバック機能が付いていてそもそもハウリングに強いです。

ピックアップのタイプ別に設定もできます。それとSHAPEボタン。これが素晴らしい。もう押しっぱなしにしています。乱れた波形を勝手に整えて聴き易い音にしてくれます。といったところで完全主観的スピーカーサウンド探求記事でした。