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あったかな音

 

今朝、夢を見ました。

大学時代の風景の中。海馬の引き出しからはっきりとした当時の光景が夢に現れました。
1997年。当時僕は千葉県千葉市にある淑徳大学のギター弾き語りサークル「お達者くらぶ」に在籍していました。
大学入学間もないころ。サークル選びで高校時代にバスケット部だったこともあり体育会系のサークルに入ろうと思っていました。長屋のようなサークル部室を知り合ったばかりの友人と見て回りました。その長屋に入って一番手前の部屋から玉置浩二を歌うギターの弾き語りが聴こえたんです。その部室の前に立ってしばらく聴いていたとき友人が僕の背中をぼんっと後ろから押しました。その勢いで思わず部室の中に入ってしまった・・。そこにいた数名の先輩方から入部おめでとうの一斉コールを浴び、なし崩し的に新入部員となってしまいました。それが僕のギター、音楽との出会いとなりました。22年後の今、楽器を作る仕事をしていることのスタート地点でした。

 

大学四年のとき、サークルの長屋部室は全て取り壊されて真新しい丸いコンクリートの建物に変わりました。

 

確か僕らの新しい部室は3階か4階だったように思います。そこで御園(みその)君という仲間がいました。彼は盲導犬のラブラドールといつも一緒。全盲でした。

 

週に何度かサークルにやってきて一緒にスピッツや山崎まさよし、スガシカオを弾き語ってました。とても楽しかった…。彼は朗らかでいつでも暖かい男。当時は何の疑問も違和感もなく一緒に歌っていましたが、そういえば彼はどうやってギターを覚えたんだろう。譜面が見えなくても音は聴いて探して弾いていると言っていたし歌詞も聴いて覚えるんだと言ってました。まるで大隈重信のように文字は書かずに全部聞いて覚えて口で伝える。コードを弾くのはある程度はポジションの形で覚えていくんだろうけど驚いたのは即興演奏で間奏をアドリブで弾けたことでした。半音ともズレることなくこちらの伴奏に合わせて曲調に合ったメロディをすらすらと紡いでいくんです。何だか音楽の神様が目の前にいるように思えました。御園君の目には光は見えていなくても心の光で紡ぐ音が多彩な輝きを放って僕の目の前で踊っているように見えました。そのときの口元は柔らかく微笑んでたこともはっきりと記憶しています。ほんとに楽しかった。傍にはラブラドールが心地良さ気に居眠りして控えていました。

 

 

 

 

 

 

サークルの備品で一番弾きにくいギターを弾いている御園君に自分のギブソンを貸してあげると「お、凄く良い音だね」と喜んでくれました。ゆずやミスチル、いろいろ弾いているうちに一人、また一人と御園君の周りにはたくさんの部の仲間が集まってくる。みんな彼の音楽が好きだった。

 

 

 

夢にその当時の光景がありありと蘇ったわけです。何とも表現できないようなとても幸せな気分の目覚めでした。
御園君はいつも幸福な空気をぼくらにくれました。あのときの御園君の放つ音のように、あったかな心で紡ぐ音ほど人を幸せにするものはないなと思い出した朝でした。そういう音を紡ぎ出せるウクレレを作っていきたいですね。