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set up

セットアップで楽器は良くも悪くもなっちゃう。木工や塗装以上に最後の詰め、セットアップは大事。ここをどこまで追い込めるか、毎度苦心を重ねる訳です。

サドルはお試し用のものが幾つかあって一番理想に近いものを探した上で個別製作に入ります。このサドル、ちょっとした高さの違いや稜線の位置をずらすことでサウンドやイントネーション、弾き心地がガラリと変化します。音色を決める最重要パーツのひとつですね。サドル、ナット、フレット。これらは言ってみれば靴みたいなもんです。街中歩くなら軽快なスニーカー履いていくし山行くなら堅牢な登山靴。海ならビーチサンダル。ちょっと伝わらないかな。音楽ジャンルごとに欲しい音や奏法って違うじゃないですか。このサドルに加えてフレットの大きさや硬さもサウンドや弾き心地を大きく左右するので大事な要素です。古典的な細いフレットはジョイント位置近辺を中心にジャカジャカと弾いたり、ウクレレ本来の軽快なサウンドを奏でる弾き方に向いてます。太めのフレットはギターライクな重厚でサスティンの効いたサウンドに指向しています。コードはサウンドホール辺りから上を甘く奏で、メロディは音が立つようにブリッジ寄りの硬質な音で奏でる。弾き分けて弾く。そこを理解して弾くとフレットやブリッジごとの設定を生かした演奏ができるかと(作ってる側からの意見ですが)思います。と、ここまで語っておいて何ですが僕レベルではどう弾けば一番このウクレレのポテンシャルを最大限に発揮できるかはまだよくわからんと言う部分も大いにあります…。今後これをお店に展開していって上手に弾きこなす方が現れることを願っております。そしてそんな方に出会いたい。

ですので今回打ち込んだこの1.65ミリ幅のフレットはやや広めの部類になるのでギターライクな奏法に指向してます。これまではオーソドックスに1.1ミリ幅のフレットを使ってきましたが前述したように古典的なウクレレ奏法向きなわけでした。僕が作ってきたウクレレのサウンドはどちらかと言えばギター寄りな重厚なサウンドチューンのボディに組み上げていたのに細いフレットを打っていたのは無知の極みというかもったいなかったなと今は反省しております。・・・さて、本題に戻ってセットアップの話ですが、完成までに最低でも二回セットアップします。ここはじっくりと。一度完成状態まで持って行って暫く弾く。気になる点を洗い出す。そのポイントを頭に入れた上で本仕上げに向かいます。まずは弦の張り具合。この点についてはナットの溝の深さ、ブリッジサドルの高さ、フレットの高さや状態の3点が互いに関係してるのでアライアンスの取り方のイメージを一度目の仕上げ弾き時に詰めておきます。テンションバランスをイメージすることと、もう一つ。デッドポイントを、特にハイポジションの響き不良を洗い出します。この点は擦り合わせの具体的な持っていき方をイメージするわけです。僕にとってセットアップとは主にこの2点を突き詰める作業です。

何度擦り合わせてもビビりがとれないいわゆる「ビビり迷宮」から一向に脱出できないなんて経験はビルダーなら誰もがあると思います。決して正解はないんですが僕のやり方はまず指板(フレット)全体をフラットに擦り合わせて1.5ミリの高さまで落とし込みます。その後一旦調弦して解放弦のびりつきを確かめます。びりつきがなければ次は1フレット以降から最終フレットまでを擦り合わせます。また調弦して1フレットのびりつきを確認。次に2フレットから最終までを擦り合わせる。また調弦。これを繰り返す訳です。だから一旦全体をフラットにした後は階段状になって行きます。一段0.05から0.1ミリ前後。たいていミドルポジション辺りから先はフラットに近い状態でびりつきはなくなるので実質的に7フレット辺りまでが段々になります。ハイポジションの響き調整は局所ごとに直して行きます。この作業は地味かつ時間を要しますがこのポジション一つ一つの音を綺麗に仕立て上げる作業がセットアップの仕事です。それと↑写真にある黒い輪っかですが、これは100m巻きになったオルカス弦です。なぜこんな長い状態で買っているのかと言えば、このセットアップのためです。弦はバラツキがあります。100mの中でバラツキが大きい部分に当たればいくらアライアンスをとってもビビります。弦を弾いて真横から見て、変な振れ幅になるならバラツキが大きい部分だと思います。順番としてはまずこの弦の正常な部分(振れ幅)かどうかを見定めてからアライアンスを取るセットアップに入ります。案外ここは見落としがちです。箱の鳴り方を見て弦のゲージの組み合わせを変えるので市販のオルカス弦のミディアムセットやヘビーゲージのセットなどとは違います。例えば1弦A音が篭りがちだなと感じたら細い019インチ弦を、もっと太めの音にしたかったら022インチか024インチみたいにその都度4本の内容をブレンドしてます。

ローG弦だけは昔からこのハナバッハの黄色ですね。だいぶ前にオータサンが愛用してみえた弦でクラシックギターD4弦のsuper low tension 8154SLT。アマゾンで売ってますよ。間違っても青(ハイテンション)張らないで下さいね。