変遷と客観視

 
 ここ数ヶ月の間に製作スタンスが変化しつつあります。以前は自分が作りたいものを形にして自分で色々と反省点を洗い出すことの繰り返しでした。ベーシックシリーズを開発してからその考えが徐々に変わってきました。このシリーズが自分が思っていた以上に大きな反響があったことでユーザーが求めているものが何なのかをより強く意識するようになりました。まだまだ駆け出しの自分はオハナさんに沢山のことを教えて頂いてます。全てのモデルの基礎に当たるこのシリーズがもっと沢山のユーザーに広がることでハイエンドモデルの間口もさらに広がること。価格帯の幅を広げることでもっと多くのユーザーに出会えること。ベーシックシリーズを安定して製作しながらハイエンドモデルを並行して作って行くことが今の課題です。そのためにずっとこだわってきたサイド板の手曲げをやめて新たにサイドベンディング機を米国LMIから輸入しました。そのままでは使えないので自工房のモデルごとに曲げ型を作る必要があり、ソプラノからテナーまで全機種製作しています。今週はそれに二日間ほど費やしています。ジグも何点か増やすつもりです。製作の効率化を図っています。
製作スキルを磨くことや独自の工法を考案したりオリジナリティを追求することは個人製作家にとってとても大切なことだと思います。同時にそれらがユーザー、プレイヤーにとってどんなメリットをもたらすのかを大前提にしなきゃいけないことも4年目にやっとですが何十本と製作してきて分かりかけてきました。もっと前からそのことは頭で理解出来ていましたが実際どう作るべきかが五里霧中だったのでガムシャラに「作りたいものを作る」を繰り返してきました。その中で少しずつ自分の考えと世間とのズレを矯正してきたように思います。ネック製作時に各ポジションごとに数値化して形にして行く、正工法とされるスケールから2〜4㎜後退させた位置にブリッジを貼り付けることを経験則から見直し、スケールどんぴしゃの位置に貼り付けて3ミリ幅のサドルの上でイントネーションを調整するように変えたこと、ウォーミーなサウンドとタイトでサラウンドな音色に区別して行くためにサウンドホール周りの補強方法をベーシックシリーズとレギュラーモデル以上で分けたこと、全モデルともウッドバインディング仕様に変更したこと、ボトムオーナメント形状を柔らかいデザインに変えたこと、ブレイスの形状を変えたこと、オリジナリティを強くするためにバックペンダントを裏板に飾り付けたこと…などまだまだ沢山の変更して来た点があります。一気に変わったわけではなく少しずつユーザーの声を反映させてきた積み重ねです。工房を開設してしばらくは何もデータがないので主観でとにかく作るのみ。それからは一つずつ、ユーザーや自分自身も製作に対して客観視して行くことでズレを矯正する。先週から開始した試奏サービスもその一環です。このTestPlayはオーダーを取るために始めたものでは決してなく、より客観視を強めて行くためのもの。私が思っている以上にユーザーはシンプルな楽器に好感を持っていることを知りました。またそれとは対極にものすごく凝ったカスタムモデルのオーダーも少なくはありません。裾野としてベーシックシリーズが広がり、それを土台として山の上に向けてカスタムモデルがあるような製作スタンスを作り上げて行こうと思います。