古材の魅力

写真はホンジュラスマホガニーの年代物シンカー古材です。シンカーものというのは英語の沈む意味で、伐採運搬船や運搬筏から何らかの事由で転落し川底に沈んでいたものを採取した材を指します。マホガニーと名の付く材は世界中の広域に渡って存在しますが楽器用材として本物偽物という概念で論議することにあまり意義はないものと個人的には考えます。扱ってきて確実に言えることは材質が個々にまるで異なるということです。アフリカンマホガニーと言ってもアフリカ大陸は果てしなく広大で、アフリカのどこかは年代ごとに主な採取地が変化するしホンジュラスであっても緯度の違い一つで変わって来ます。同じ仕入れ先であってもロットによって材質が違います。ハカランダに至ってはビンテージマニアの中にはブラジルのバイーア州産のみが本物であるという考えもあると聞きます。


ハカランダ。ブラジリアンローズウッド。ブラジルも広い。コーヒー豆にサントスやモカといった種類がありますがサントス港から出荷されたものは皆、「サントス」だし中東モカ港も同様です。コーヒーベルト地帯に産地は数多あれど港の名前に由来していたりします。よりセレクト種に区分するべく大抵はさらにどこの農園さんの豆かまでハッキリさせているのがコーヒー豆の世界ですが、古材やレア材のような特殊な事情のものは分かりやすいとして全ての楽器用材においてもっと製作する側に細かい情報まで分かるようにしてほしくもあります。 

…さて話をマホガニーに戻しますが、古材は年月を経て細胞が引き締まって行った結果、新材よりも硬質になります。新材のマホガニーはとても軽くで柔らかい。どちらも基本的にはマホガニーの甘い音をベースとしていながらもサウンドに加味される硬さが違います。好みの問題かと思いますが甘い中にも芯の太いサウンドになる傾向がある古材の魅力は捨てがたいものです。俗に言う「枯れたサウンド」というのは私の考えではそういった古材の性格のような、「全体的に甘いマスクをかけたような音色をしていながらも輪郭の鮮明な芯のあるサウンド」であると思っています。楽器として長い年月を経過してきたビンテージものと単に材として年月を経過してきたのではやはり性質は異なりますが、新品にしてよりそれらのサウンドに近いものからスタートするという意味では魅力的とも言えます。レクイエム材に人気があるのにはやはりそれなりの理由があるようです。マホガニーレクイエム材の王様、キューバンマホガニーともなるとハッキリ言ってローズウッドのような堅さで曲げていると金属のバネのような感じで手曲げには厳しい存在です。マホガニーは産地、年代ごとに魅力に溢れる材でとても大好きです。総じて音色はジャジーな甘いマスクをかけたようなものになり、アピラックに作ったスタイル4コンサートも古材ホンジュラスマホガニーのレクイエム材です。気になった方はぜひ「古材のサウンド」という視点で今一度、動画を見て参考になさって下さい。製作中の上の写真の古材マホガニーソプラノは製作段階でHOLDとなりましたが、工房ストックにはコンサートサイズまでならあと一台製作できる分だけの古材マホガニーが残っています。ストック写真左側が一定期間の乾燥を終えた新材のホンジュラスマホガニー、右側が古材シンカーマホガニーです。まるで風合いも硬度も違います。ご興味がある方はどうぞお気軽にメッセージ下さい。