ベンディングアイロン

もう使い続けて10年になるベンディングアイロンです。私が製作して来たウクレレの側板は全てこのアイロンによって曲げられています。鉄筒の焦げに歴史を感じる今日この頃です。このアイロンにはほんとにたくさんの経験が詰め込まれています。初めて曲げたのは確かアフリカンマホガニーだったと記憶しています。要領を得ずに力任せに曲げて開始数分で割ってしまったことを今でも忘れません。初めて曲げた高級木材。樹脂の半端なさに驚いたココボロ。いとも簡単に割れてしまう激しい杢の入ったハワイアンコア。ほんとにマホガニーかと疑わんばかりに(むしろこっちが本物ですが)固かったキューバンマホガニー。材や材質による失敗例の積み重ねが全てこの鉄筒に詰め込まれて今があります。
今では材ごとの性格を見ながら両手の感触を考慮して曲げて行っていますがそれでもたまに割れることもあります。その度に製材時点での厚みの調整を試行錯誤したりして来ました。手曲げの利点はそんな製作者を失敗から木材自体の性質を学ばせてくれるところにあると思います。生前に矢入一男さんが言っていたことの重みをこの頃よく実感しています。「とにかく木を触れ」。職人の基本は木を知ることに尽きると言っていたのは本当だと思います。時間がかかっても製作の第一段階、製材の時点で個体の性質を掴みきれるかによって殆どの完成形は出来上がっているとも言えます。ウクレレに至っては表板だけでなく側板、裏板すべての贅肉を適正に落としきることが命題になってくるので尚のことかも知れません。